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最高裁判所第一小法廷 昭和39年(あ)1854号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人立崎亮吉の上告趣意第一点は、憲法三一条違反をいうが、その実質は単なる法令の解釈適用の誤を主張するにすぎず、同第二点は、単なる法令違反の主張であり、同第三点は、事実誤認の主張であって、すべて刑訴法四〇五条の上告理由に当らない。(本件共洋電気株式会社の設立登記に際し、定款の作成は行われず、株主募集につき株式引受のなされた形跡なく、株式の払込はすべて見せ金によるものであり、創立総会は全く開催されたことなく、従って取締役等会社機関の選任なども行われていないことは、第一審判示及び挙示の証拠により明らかである。右のごとき事実関係のもとにおいては、共洋電気株式会社は不存在というのほかなく、その設立登記がなされてもその登記事項はすべて不実のものといわなければならない。本件につき、商業登記簿の原本中「発行済株式の総数」及び「資本の額」に関して不実記載罪が成立するとの原判断には適切でないところもあるが、しかし前記のように、本件会社は不存在であって、その登記事項のすべてに関し公正証書原本不実記載罪が成立する場合であるから、結局論旨は採用しがたい。)

よって同四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 松田二郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 岩田 誠)

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